デルタ株の脅威-安全寓話の粉砕
8月5日、東京都の新型コロナウイルス新規感染者が5000人を超えた。都内の感染者数が500人を超えた時、「増えたねぇ」「たいへんだねぇ」と言っていたのも今は昔。その10倍の数であり、再び多くの地域に緊急事態宣言が発令され、まん延防止措置地域も拡大された。
パチンコ業界、特にパチンコホールでは今一度、自社自店の対策の徹底を図るべきである。どこかに慣れが無いか、どこかに緩みが無いか、どこかに侮りが無いか。「パチンコ」、「夜の街」、「居酒屋」。コロナ禍の元凶であるか如く空前のバッシングを浴びた当事者であるからこそ、もう二度と同じ状況は作らないという、業界全体をあげた覚悟が今一度試されている。
■安全寓話を突き破った「デルタ株」の脅威
パチンコ店は比較的安全な場所である。いつしか世論はそのような認識を持つようになった。そこには「ホールでクラスターは発生させない!」という覚悟のもと、全国のパチンコホールが感染予防に全力を尽くしたことはもちろん、業界独自の感染防止ガイドラインの策定や、ホールの換気力の検証と啓蒙を積極的に行った業界団体の努力もある。その結果、現時点に至るまで、パチンコホールの営業所内では1件のクラスターも発生させていない。
しかし昨日までのそうだったからといって、明日からも同じであるとは限らない。
例えば百貨店である。
百貨店はコロナ禍において「大規模商業施設」に分類され、政府や行政の措置のもと休業を余儀なくされた。多くの百貨店で、昨年対比で売上高は大きく下がり、事業継続が危ぶまれる状況にまで追い込まれた。本年5月、何度目かの政府の緊急事態宣言が延長される際には、業界団体である日本百貨店協会や日本ショッピングセンター協会は、これ以上の休業要請には応えきれないとし、政府に対し、支援金の増額か、それが出来ないのであれば営業の再開を強く求めた。百貨店業界では、独自のガイドラインを策定し、感染防止対策を強力に推進してきた。その時点まで、大規模なクラスターは1件も発生していない。
しかし、今はどうか。
東京新宿のルミネエストでは4日までに従業員ら61人が感染、同じ新宿の伊勢丹では1週間で81人の感染が確認され休業を余儀なくされた。東京ばかりではなく、大阪梅田の阪神百貨店でも133人の感染者が確認され、百貨店側は「客から感染した可能性が高い」と発表している。どこかで人々は、百貨店は安全だと思っていた。売り場も広い。特に積極的に会話をする訳でも無い。換気設備もしっかりしている。でも百貨店の安全は「神話」ではなく「寓話」だった。百貨店は安全だというその寓話を、感染力が桁違いと言われる新型コロナのデルタ株が粉砕した。
望みはしないが、明日は我が身である。
■パチンコ業界がやるべきこと
現時点まで、パチンコ店の営業所内でのクラスター発生の報告は無い。しかし営業所外でも必ずしもそうではない。某県パチンコホール企業では、社内でクラスターが発生し、ホールの休業を余儀なくされた。クラスターには発展しなかったものの、どこそこの会社で社員がコロナに感染したという話は、業界人であれば一つや二つは耳にしたことがあるだろう。
全国のパチンコホールがまずすべきことは、ホール内の徹底した感染防止対策である。
その上で、より一層、バックヤードや社員の社外における活動において最大限の注意を払うべきである。会社が、社員のプライベートに至るまで厳しく管理することは、物理的にも、法律的にも困難であるが、しかし就業時における「教育」や「注意喚起」でも少なからず効果はあるだろう。まずそれをやろう。
パチンコホールで働くスタッフは接客のプロである。就業時間外の行動の自己管理は、自身が接客のプロフェッショナルという自覚があれば大きく変わる。まずは経営者や管理職から襟を正し、パート・アルバイトに至るまで社内において強い意識統一を図るべきである。
・職務中の休憩(食事休憩含む)は、少人数で時間を分けて感染のリスクを減らすようにシフトの見直しと管理を再度徹底する。
・会食(特にアルコールを伴う)に関して、スタッフ・アルバイトを含め再度徹底させる。また外出をする際には、人との接触をできるかぎり減らすように促すよう徹底させる。
それでも万が一は、(万が一というくらいなので)0.01%は起こり得る。
その際は、企業の社会的責任を果たすためにも、何よりもお店に来てくださるお客さんのためにも、会社の公式な発表と今後の対策の公表、安全性の再確保のための最善手を選択してほしい。
例になるが、ホールスタッフがお客様との接客の有無がないかを確認し、接触が無かった場合は、安全であることをお客様と外部に至急に伝えなければならない。
今、パチンコ業界にとって一番怖いのは、コロナに感染することでは無い。
コロナ感染時の対処を誤って、社会的な信頼を失うことである。
この両方の対策を併せ持つことが、今、パチンコホールに求められている。
■世論は右にも左にも振れる
ここからは蛇足である。
8月3日のネットニュースに某県某市において「遊技場でクラスター発生」という報道がなされた。ソースは某市の公式リリースである。そのネットニュースのコメント欄の多くは、「どこのパチンコ屋だ?」「俺、昨日パチンコ行ってたし怖えぇ」などのコメントが次々と記入された。
クラスターの規模や、ニュースが報じた週間来客数を見れば、業界人でなくとも、ほぼ100%「ぱちんこ屋」の話では無いというのが分かる。行政側が「遊技場」と表する場合、それはパチンコや麻雀、ゲームセンターやビリヤード場、ボーリング場、将棋クラブや囲碁クラブ等、様々な遊技施設を指す。ただ「遊技場」とニュースに出れば、世論の7割~8割は「=パチンコ店」と認識する。それが現実だ。
昨年5月の空前のパチンコバッシングを超え、業界関係者の不断の努力によりパチンコ店における一定以上の安全性が世の中に周知されたと安堵していたら足元を掬われる。世論はちょっとしたことで右にも左にも振れる。我々の手が届かない場所でバッシングされることが有るという事も常に肝に銘じておくべきだろう。
どの業界であれ、その業界は、業界に従事する全ての人たちの努力と覚悟と想いによってでしか守られることは無い-
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