長らくホール営業を支えてきた人気のパチスロ旧基準機が段階的に撤去されて以降、パチンコとパチスロの営業状況が逆転し、営業の軸足をパチンコ強化へとシフトする声が多く聞かれます。実際、パチンコフロアにはパチスロフロアから流入したと思われる若年ユーザーを見かけることが増え、６月以降は、「Ｐ牙狼月虹ノ旅人ＭＡＸＸ」「Ｐフィーバーガンダムユニコーン」と、新たなヒット機種が誕生しました。長引くコロナ禍で遊技客数が満足に回復していない状況を考慮すれば、恐らく従来のパチンコユーザーに、新たに流入してきたパチスロユーザーが加わり、これらの機種が高稼働を生み出したと考えられるでしょう。

そこで今回は、パチスロとパチンコとの親和性、パチスロユーザーが望むパチンコ機という視点に基づき、パチスロユーザーをパチンコに定着させる施策を検証したいと思います。

◆パチンコハイミドルの遊技に負担を感じるパチスロユーザーもいる

パチンコとパチスロを対比させるにあたり、投資金額に着目し、既存の人気機種や今後登場する新機種の初当たり及び天井（遊タイム）到達までに要する消費金額を算出しました。なお、パチスロでは、設定①の初当たり確率を採用し、天井に複数の条件がある場合、最大のゲーム数をベースにしています

先ずパチスロを見ると、天井到達までの金額で５号機と６号機との間に大きな差がありますが、初当たりに関しては、「ミリオンゴッド」シリーズで15,000～20，000円、その他のＡＴ・ＡＲＴタイプで8,000～10，000円、Ａタイプで4,000～5,000円を要する結果となりました。同じパチスロＡＴ・ＡＲＴタイプの中でも、射幸性レベルがトップクラスとされる「ミリオンゴッド」シリーズとその他の機種では、5,000円以上の開きがあることが分かります。

この初当たり金額の違いを踏まえると、同じパチスロユーザーの中でも、日ごろどのパチスロ機をメインで遊技しているかに応じて、ハイミドルへの遊技感覚が異なることが窺えます。換言すれば、ハイミドルの遊技に際して、負担を感じているパチスロユーザーが存在するかもしれないということです。

そこで、次にパチンコで初当たりと天井到達に要する金額を見ていきます。

これによると、ミドルタイプは初当たりに15,000～20,000円、天井到達までに50,000円以上、ライトミドルは初当たりに10,000～12,000円、天井到達に25,000～30,000円、甘デジタイプは初当たりに5,000～6,000円の投資を要しています。

つまり、パチンコのハイミドルの投資金額は、パチスロの中でも射幸性レベルがトップクラスとされる「ミリオンゴッド」シリーズに匹敵しており、全てのＡＴ・ＡＲＴユーザーの遊技に適しているわけではありません。

現在は「話題機だから」「勝てそうだから」という理由から、５号機時代にＡＴ・ＡＲＴタイプをメインで遊技していたパチスロユーザーが全般的にパチンコフロアへと流入し、ハイミドルを遊技している状況にありますが、実際のところは、金銭的に無理をして遊技しており、その結果、投資に耐えきれずに疲弊してしまっている恐れも十分考えられます。

この様なユーザーに対しては、「ミリオンゴッド」シリーズ以外のＡＴ・ＡＲＴタイプと投資金額の似ているライトミドルへの遊技を推奨していった方が定着していく可能性があります。

改めて、「ミリオンゴッド」シリーズ以外のパチスロＡＴ・ＡＲＴタイプとパチンコのライトミドルの初当たりと天井到達に要する金額を対比させると、初当たり金額の差は約1,000円程度に収まっており、パチスロユーザーが違和感や負担感をさほど覚えることなく、パチンコのライトミドルを遊技できることが示されています。むしろ、投資の上限とされる天井到達までの金額はパチンコのライトミドルの方が5,000円以上低く、パチスロＡＴタイプよりも安心感を持って遊技できると言えるでしょう。さらに最近は「高速×高継続」というスペックのトレンドを汲み、ＲＵＳＨ突入を機にハイミドルに匹敵する出玉感を発揮する機種も増えています。勝ちへの期待も十分秘めているわけです。

パチスロでは、ＡＴ・ＡＲＴタイプとひとくくりにされていますが、それぞれの射幸性レベルの違いにより、パチンコのハイミドルが、全てのパチスロＡＴ・ＡＲＴユーザーを吸引できるわけではありません。ハイミドルよりも射幸性レベルの低いライトミドルタイプや甘デジでもラインナップを充実させ、パチスロユーザーを広く受けていくことが重要です。

◆パチスロＡＴユーザー向けにライトミドルの受け皿を確保すべき

パチンコでは、これから年末にかけて、「Ｐ北斗の拳９」「Ｐ新世紀エヴァンゲリオン未来への咆哮」など、大型タイトルの導入が控えているため、パチスロユーザーのパチンコフロアへの流入が今後も続き、ハイミドルが営業の軸となっていくことが想定されます。

しかしながら、ハイミドルの遊技に耐えられるパチスロユーザーはあくまでもハイリスクハイリターンの遊技を嗜好する投機意欲の強いユーザーなど一部に限られ、負担を感じたユーザーが徐々にパチンコの遊技から離れてしまうリスクも持ち合わせています。
これを回避させるためには、パチスロＡＴタイプとの親和性の高い、射幸性レベル「中」のライトミドルを用意し、これまで１万円前後の投資で遊技していたパチスロユーザー向けの受け皿を確立していかなければなりません。

既存のパチンコユーザーにパチスロユーザーが加わり、ヒット機種を生み出すというハイミドルの流れをライトミドルにも起こし、人気復活を始めたパチンコをさらに盛り上げていきたいところです。