閑散期を迎えるにあたり

いよいよ「閑散期」へと突入します。「閑散期」という言葉が使われる様になって、久しい年月が経ちますが、例年、11月まで客数の回復が見込めず、「9~11月を如何に乗り切るか」は、この時期恒例のテーマとなっているでしょう。
特に今年は、5.5号機の新台設置期限を巡り、新機種販売ラッシュが続いたパチスロに比べ、パチンコでの新機種不足が明らかで、限られたコマの中で策を講じなければなりません。
そこで今回は、過去の閑散期を振り返りつつ、パチンコで必要な対策を検証していきたいと思います。

1:過去5年間の推移
まず初めに、過去5年間の7~12月の稼働推移をまとめました。

これによると、例年8月に稼働のピークを迎えますが、9月より稼働が低下し始め、11月に底に到達します。
ただ、各年で捉えた場合、2012~2014年と2015~2016年で大きく異なる箇所が見受けられました。それは2014年までは、7月からピークとなる8月にかけて稼働が最低でも約1000以上上昇するのに対し、2015年以降は1000未満の上昇に止まり、「ピーク時の稼働が最大にまで上昇しきれていない」ということです。別の捉え方をすれば、ここ1~2年は書き入れ時に大きな貯金が蓄えられないまま、閑散期に突入してしまっていることになります。
当然ながら、閑散期にピーク時の稼働を超えることは難しく、その結果として、閑散期の稼働も年々低下する傾向にあります。特に2016年は7~8月の稼働の伸びが相当緩やかで、これが9月以降、「CRスーパー海物語IN沖縄4」「CRルパン三世 Lupin The End」「CR花の慶次X~雲のかなたに~」と大型タイトルが相次いで登場したにも関わらず、稼働の低迷へと繋がってしまいました。
ある意味、商戦期と閑散期の稼働には相関性があり、「ピーク時の集客を最大化すること」が「閑散期における最低稼働(ボトム)の底上げ」に大きく影響するとも解釈できます。
今年は、「CR牙狼GOLD STORM翔」が7月下旬から登場しましたが、本機種に対するファンや関係者の評判を踏まえると、ピーク時の稼働上昇にどれ位貢献したかについては、未知数です。
もしかしたら、今年も十分な蓄えを作れないまま、閑散期を迎えることを覚悟しなければなりません。

2:ピーク時の集客を最大化できなかった要因とは?
2015年と2016年の盆商戦期に稼働が伸び悩んだ要因として、まず始めに「2015年は10月にマックスタイプの新台設置期限が設定された」「2016年は年内にマックスタイプの完全撤去が控えていた」といった、特殊な事情が重なり、大型タイトルの導入が秋以降にずれ込んだことが挙げられます。ピーク時に向けて集客の起爆剤になり得る機種が登場せず、新規の遊技客を十分呼び込めなかったと言えるでしょう。
しかしながら、下表によると、2016年に関しては、3月の「CR真・北斗無双」導入、5月の新台入替自粛期間と様々な出来事があったものの、1~8月においては、稼働の増減が比較的緩やかな状況にありました。もしかしたら、大型機種が登場していないだけでなく、8ヶ月間もの長いスパンで稼働の大きなピークを作れなかったこともボディーブローの様にして、9月以降の稼働低迷に影響を与えたかもしれません。

●2016年1月~稼働推移

そこで、ここからは、2016年以降に登場した新機種のラインナップをスペック別で振り返り、「ピーク時に稼働が伸びきらない」要因を別の角度から検証したいと思います。

上の表の通り、2016年1~8月は甘デジやライトミドルのリリース率が高く、現在のパチンコ営業において、集客や売上の軸となるべきミドルスペックのリリース率は半数未満に止まりました。
甘デジやライトミドルの場合、低投資で長く遊べるというメリットがあり、常連客の確保や稼働の下げ止まりには一定の効果を発揮すると思われますが、基本的にバラエティコーナー内での少台数設置が主体となり、余程の大型タイトルでない限り、増客までは期待できません。また、サブ的な位置付けでもあり、これらのスペックジャンルで大々的な販促や仕掛けを行なうケースも稀です。これらを相関させれば、8ヶ月もの長い間、甘デジやライトミドルを中心とした小規模の新台入替が続いた結果、ユーザーのパチンコ遊技に対する関心やホールに対する期待値が自然と薄れていき、商戦期の稼働の伸び悩みや閑散期の低迷を招いたと捉えることができます。
やはり、集客や稼働上昇の転機となり得るパチンコはミドルスペックです。今回の例の様に稼働の停滞が長期化した場合、大型タイトルを単に導入するだけでは簡単に挽回できない状況に陥るリスクがあります、商戦期以外の時期でも、増客に繋がるミドルスペックを定期的に導入する必要性は高いでしょう。

●2016年1月~稼働推移

なお、2016年12月以降は稼働が再び上昇し、2017年1月には、マックスタイプの完全撤去が行なわれたにも関わらず、2016年7月頃の水準まで稼働が回復しました。2016年10月より「CRスーパー海物語IN沖縄4」「CRルパン三世 Lupin The End」「CR花の慶次X~雲のかなたに~」「CRヱヴァンゲリヲン11」と実績のあるシリーズ機が出揃い、新基準機でユーザーを呼び込める環境が整ってきたことが要因ですが、2017年1月に登場した「CRぱちんこGANTZ」が予想外のヒットを記録したことも少なからず影響を与えていると思われます。
さらに2017年以降も、「CR北斗の拳7転生」と「CRぱちんこ必殺仕事人Ⅴ」が登場した4月~5月に2ヶ月連続で稼働が上昇しました。いずれの時期も、パチンコユーザーであれば誰もが知る主軸機が商戦期までに出揃った後、これらをバックアップできる話題機が商戦明けに登場したという点で共通しています。商戦期のピーク時に稼働が上がりきらない状況を踏まえた場合、閑散期においても、話題機を投入し、ユーザーを新たに呼び込む“攻め”の姿勢が求められるかもしれません。
今年の秋も甘デジやライトミドルが多くリリースされます。是非、「プラスα」の効果をもたらせるミドルスペックを有効活用していきたいところです。

3:来店動機に繋がる新機種とは
以下は、ユーザーが「新機種を遊技する際に何を基準としているか」を質問したアンケート結果です。これを基に「来店動機に繋がる新機種は何か?」を検証していきます。

●ファンの新機種遊技基準:年代別

●ファンの新機種遊技基準:遊技頻度別

これによると、「版権・キャラクター」が68.3%と群を抜いて高く、次いで「外観・雰囲気」「スペック」と続きます。年代層別では、年齢層が若くなるに連れて回答率が上がりますが、中でも、若年層での回答が7割を超え、同層にとって、「版権・キャラクター」は遊技台選びの大きなウエイトを占めていることが分かります。さらに、遊技頻度別で見た場合、週2回以上遊技するヘビーユーザーであっても、「版権・キャラクター」を最も重視している点は特筆されます。

ファンサイトでは、導入前の新機種に関するスペックや分岐スタートなどのシミュレーションデータが紹介され、様々な意見交換が行なわれていますが、実際のところ、仕様やゲーム性をきちんと把握して遊技に望むファンは一部に限られ、多くのファンは、その前段階にある「知っている版権か」「好きなキャラクターであるか」で遊技するか否かを判断しているようです。

このアンケート結果を踏まえると、ここ1~2年の間でブレイクした「CR真・北斗無双」や「CRぱちんこGANTZ」「CRぱちんこ必殺仕事人Ⅴ」についても、最初の遊技のきっかけは「版権・キャラクター」だったかもしれません。恐らく、「版権・キャラクター」に興味を持って遊技を開始したファンが、これらの機種の持つスペックの爆発力、演出やゲーム性の面白さを体感することによって、新たな魅力を見出し、「版権・キャラクター」「スペック」「ゲーム性・演出」を総合して「面白い」「また遊びたい」と評価しているでしょう。
そう考えると、「版権・キャラクター」は初期集客力を高める要素、「スペック・ゲーム性・演出」は継続的な稼働を後押しする要素であり、ユーザーの来店動機に繋がる新機種とは、「版権・キャラクター」の魅力が高い機種と解釈することができます。

また、年齢層が若い程、「版権・キャラクター」への回答率が高かった点を踏まえれば、若年層向けの「版権・キャラクター」の方がより効率的な集客へと繋がると思います。若年層はネットやSNSを活用した情報伝達スピードが早く、1度ユーザーの間で好意的な評価が広まった場合、瞬く間にブレイクする可能性も秘めているからです。

4:まとめ
以上、様々な角度から閑散期に向けた対策を検証してきました。今までお話してきたポイントを改めて列挙したいと思います。

① 数年前と比較して、盆商戦期の稼働を最大化できず、それと呼応するかの様に閑散期の稼働が年々減少。「トップ(=商戦期)」の伸び悩みが「ボトム(=閑散期)」にも影響している。
→【対策】「トップ(=商戦期)の最大化」が見込めない場合、閑散期にも「攻めの一手」が必要。

② 昨年、商戦期の稼働を最大化できなかった要因は、現在の集客・売上の軸となるミドルスペックのリリース不足にあった。稼働の伸び悩みが長期化した場合、大型タイトルの導入で簡単に巻き返せない程の状況に陥るリスクがある。
→【対策】商戦期以外の時期でも、話題性のあるミドルスペックを導入し、ユーザーのパチンコ遊技への関心や期待度を維持しなければならない。

※ 当サイトで使用しているホールや機械の画像はすべて許可を取り撮影し、掲載しております。

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