多様化するライトミドル ~ そのスペックが意図するものとは?
長らく、パチンコでは、マックスタイプ=大当たり確率約399分の1、ミドルタイプ=同約315~317分の1、ライトミドルタイプ=同約199分の1、甘デジタイプ=同約99分の1と、スペックジャンル毎に大当たり確率がある程度固定化されていました。この固定化は、プレイヤーにとってもスペックジャンル毎に投資や出玉のイメージが容易に判別できるというメリットがあり、どちらかと言えば、旧基準時代のパチンコは、スタンダードな大当たり確率を保つことを最優先事項とし、スペック設計が行なわれていた様に思われます。
しかしながら、くぎ問題に端を発した「検定機と性能の異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」の問題が2015年にクローズアップして以降、通常時のベースを考慮したスペック設計が必要とされ、今年2月に施行された改正規則では、このベースを規制として明文化すべく、「出率の下限値」という項目が新たに追加されました。現在は「検定機と性能の異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」の問題も解決し、通常時のベースをある程度担保したパチンコ機がリリースされていますが、やはりこのベースの存在により、賞球3個の旧基準パチンコに匹敵するメリハリを打ち出すことが難しくなっているようです。
その結果、プレイヤー視点では、初当たりまでに要する金額(=投資)にマッチした出玉(=見返り)が獲得できなくなってしまい、この出玉への不満や物足りなさから、甘デジや低貸玉の不振を招いていったことは現在の稼働データで十分示されていることでしょう。
この状況を打破すべく、2018年に入り、各メーカーから、大当たり確率や連荘継続率、仕様の異なるライトミドルが数多くリリースされております。前回のブログでは、これらのライトミドルを大当たり確率や射幸性レベルから「ミドル寄りのライトミドル」「甘デジ寄りのライトミドル」とジャンル分けし、それぞれの特徴を紹介してきました。このうち、「甘デジ寄りのライトミドル」については、メーカー制作の資料や各情報媒体で既に検証が行なわれており、これらをご覧になられた方は大凡の機種イメージが沸いているかと思われます。
そこで、今回は、もう一方の「ミドル寄りのライトミドル」について、シミュレーションデータを作成し、スペックの意図や狙うべきターゲットを検証していきたいと思います。
◆「AKB」「まどマギ」比較
スペックを検証するにあたり、賞球3個の旧基準ライトミドルの代表格「CRぱちんこAKB48V8」と同じく京楽からリリースされたライトミドル「CRぱちんこまどかマギカまぎかver.」の各種データを比較しました。
表1
先ず、表1を見ると、「AKB」と「まどマギ」では、「ボーダー」で約2.8回転と比較的大きな開きがあり、その結果、「初当たり平均投資金額」では「まどマギ」の方が「AKB」より200円程減少することとなりました。「AKB」の大当たり確率は約199分の1、「まどマギ」の大当たり確率は約228分の1となりますが、通常時のベースが確保されたことにより、投資レベルは両機種で大きな相違がないことが分かります。
表2
次に表2を見ると、「単発TY」「平均TY」以外の項目を除き、「まどマギ」が「AKB」を若干ながら上回りました。トータル的な出玉性能こそ劣るものの、「RUSH」突入後の連荘性能や出玉性能は「まどマギ」の方が僅かに勝っており、実際に「まどマギ」がホールに導入された際には、「AKB」に匹敵する出玉の爆発力を生み出すことが可能かと思われます。また、最近のライトミドルでは、連荘時の出玉性能を上げるべく、単発大当たり時の出玉を大きく下げる機種も見られていますが、「まどマギ」では、900個以上の出玉を担保しました。RUSH突入時の出玉感と単発大当たり出玉の納得感とのバランスに配慮した点は「AKB」と同様で、「AKB」が導入された当初の稼働状況を振り返れば、「この出玉で次の大当たりを目指す」というプレイヤーの意欲をきちんと掻き立てることができるでしょう。
これらを相関させれば、今回の「まどマギ」は賞球3個の旧基準「AKB」の持つ出玉性能や連荘性能を再現することを意図し、スペック設計がなされたと言えます。別の見方をすれば、従来の大当たり確率199分の1では、「AKB」の様な連荘出玉の爆破力や単発出玉の納得感を生み出すことは非常に難しくなっていることが示されているようです。
◆「ミドル寄りライトミドル」の運用ポイント
ライトミドルタイプ=大当たり確率約199分の1という概念が定着していることに加え、2015年11月より大当たり確率の上限が約319分の1に設定されたことが影響し、大当たり確率が約200分の1を下回る「ミドル寄りのライトミドル」に対して、中途半端なイメージを抱く方は多いかもしれません。ただ、今回のデータ検証により、これらのライトミドルは賞球3個の旧基準ライトミドルの持つ射幸性レベルや出玉性能を再現することを大きな狙いとしており、あくまでも旧基準ライトミドルの延長線上にある機種ということが分かります。
プレイヤーにとっては、旧基準ライトミドルで体感できた「投資と見返りのバランス」がきちんと保たれた、「勝ちを意識できる」「夢の見られる」スペックと言え、遊技への満足感を十分与えることができるでしょう。
2014年に導入されたライトミドル版「CRぱちんこAKB48バラの儀式」が現在も約3000弱の店舗で設置されており、賞球3個の旧基準ライトミドルに対するニーズやファンが存在していることは確かです。むしろマックスタイプの完全撤去などの諸問題が重なり、「AKB」以降、有力なライトミドルが登場してこなかった経緯を踏まえれば、ここ数年間は、「ミドルタイプを遊技するには負担が重いが、爆発力のある出玉も体感してみたい」「1万円程度の投資でもじっくりと勝負してみたい」というライトミドルユーザーの要望を十分満たすことができない状況が続いていた様にも思われます。
旧基準ライトミドルはいずれ撤去しなければなりません。先ずは旧基準の代替機、さらにはこれらを止むを得ず遊技しているユーザーのニーズを満たす機種として、「ミドル寄りのライトミドル」を活用していくことは有効です。
◆固定概念からの脱却
ここ最近の甘デジや低貸玉の不調を踏まえると、プレイヤーは高確率タイプにおいても、低投資で大当たりが期待できる「遊びやすさ」だけでなく、投資に見合った「出玉の満足感」を求めていることが改めて窺えます。むしろ現在の高確率タイプはベースの設定により、「遊びやすさ」がある程度保障されており、出玉感を求める傾向がより強くなったとも捉えることができます。
現在、「ミドル寄りのライトミドル」では、大当たり確率や連荘継続率といった表面的な数値で様々な違いが見られていますが、そのスペック設計の根幹には、プレイヤー目線で捉えた投資負担や出玉感において、賞球3個の旧基準ライトミドルと大きな違和感が生じないことがあります。機種選定の際には、大当たり確率や継続率だけにとらわれず、「投資と見返りのバランスがきちんと保たれているか」、さらに言えば「投資に見合った出玉を充分生み出せるか」を重要視していった方が良いかもしれません。
前回のブログで「今後のライトミドルには“ミドルタイプの受け皿”と“甘デジや低貸玉をフォローできる低射幸性スペックのジャンル拡大”の2つの役割が求められる」とお話ししました。これにより、ライトミドルコーナーでは、来店時間や来店頻度、遊技予算、好きな機種ジャンルといったあらゆる面において、遊技スタイルが異なる様々なユーザーが混在していくことが想定されます。そのユーザーのニーズにきちんと満たしていくためにも、「ライトミドル=大当たり確率約199分の1」という固定概念を捨て、多様な射幸性レベルと仕様を持つ機種を取り揃えていく必要があります。
スペックの多様化により、非常に頭を悩ませるジャンルではありますが、それだからこそ、プレイヤー目線での「投資と見返り」のバランス、スペックのポテンシャルなど、掘り下げた数値に着目し、機種選定を行なっていきたいところです。
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