脱!マタハラ を考える

先日、とある代議士が「働き方改革関連法案」の会議で、自身が運営する保育園で採用したスタッフが「雇って1カ月後には実は妊娠して産休に入ると(言ってきた)。人手不足で募集したのに、それは違うだろと言った」と発言し、「これはマタハラだ!」と議論を呼んでいるそうです。

採用の段階で妊娠を隠していた、ということならば、それは間違いなく、その女性のマナー違反だと思います。ただし、管理者であれば、生殖年齢にある女性に妊娠する可能性がいつでもあることは当然に考えておかないといけないと、私は思いますし、それは歓迎すべきことに思います。若い女性がいつでも出産をし子育てをすることが、当たり前にできる社会でなければ、男女が平等に働く社会などとは言えません。

人手不足が深刻な状況はホール様の現場でも同じことだと思います。知り合いのホール店長さんから、「うちのスタッフが産休に入ると言ってきて、困っている」との愚痴の電話を昨日ちょうどもらったところです。何を困っているかと言うと、そのスタッフさんの産休による指揮系統変更が、スタッフ間に諍いをおこし、どうにもスタッフ間の空気が悪くなっていることだそうです。なぜなら、その女性は今年の4月に昇進し、チーフになった矢先のことだったようなのです。現場が混乱することは、理解に易いことです。ただ、その混乱がスタッフ間の「個々の業務がかわる(負担が増える)」ことへの不安から「役職者になったばかりで産休はありえない」との不満に変わり、やがてハラスメント的なイジメに近い状況になってしまっているとのことです。特に女性スタッフ間が深刻とのこと。これがまさに現実なのです。

ご存知でしょうか?実社会において、本当の一番のマタニティーハラスメントとして恐ろしい要素は、何を隠そう女性同士からくるものなのです!
と言うのも、職場に遠慮して妊娠を控えているという女性が結構多くいるからなのです。研修中だから、転職したばかりだから、責任ある立場だから、昇進にひびくから、そして他の人が妊娠しているから、など等の理由で妊娠を控え、なかなか妊娠に適したタイミングを見出せずにいる女性が多くいるのです。そして、遠慮をして妊娠を控えている人にとって、妊娠をした人が羨ましい半面、「図々しい」「非常識」という感覚に映ってしまうものなのです。だからこそ、妊娠者が出ると、素直に喜んだり温かく見守るどころか、あたかも仕事を放棄した「無責任」で「図々しい」人の烙印をおすようになり、冷たい空気を作り出し不調和音がスタッフ間に生じてしまう傾向にあるのです。
又、一方妊娠者はなかなか妊娠の事実を早めに報告できず、ギリギリになって、てんやわんやしてしまうという決定的な間違いも起こしてしまいがちです。なぜならば、職場で好意的な反応が見込めないから、なかなか言い出せないのです。これが妊娠問題の「暗黙の負のスパイラル」となり、女性社会に渾然と存在するハラスメントとなることを覚えておいていただきたいところです。

日本の未来のためにも、どんどんこの「暗黙の縛り」を破っていく必要があると思います。業界全体としても、子作り子育てにやさしい業界となれば、今後の雇用も好転するはずです。社会的責任を積極的に業界全体で負っていきたいものですね。

それにはどうすべきか?
この「暗黙の負のスパイラル」を徹底的に壊すしかありません。周囲の好意を得、スムーズに育休を取得するためにはどうしたらよいかを考えてみました。

まず、誰にでも「妊娠」「子育て」に対し、会社をあげて積極的に応援するということをはっきりと謳うことです。そして産後は会社に復帰してもらい、又戦力として、頑張ってもらいたいことをしっかりと伝えるのです。長い目でみれば、それが安定したスタッフの確保に繋がり、円滑な人員管理ができることを、しっかりと見据えて。
休んでいる間、そして復帰してからもしばらくは自分がフォローをしてもらう立場になることを理解として植え付け、それをお互い様で助け合える環境を作るのです。普段から周囲の人の仕事のフォローを心がける、思いやりある仕事場にしたいものです。
又、同時に妊娠した際は、とにかく早く上司に報告することも、普段のコミュニケーションで補いたいですね。それは産休に関わらず、どんな休みにおいても、業務は引き継ぎが必要であり、少しでも早く報告することは当たり前なのですから。それを徹底すれば良いのです。
これは妊娠だけに関わらず、今後は介護休暇という問題にも応用されるべきです。こちらもしっかりと会社としてフォローしていきたいところですね。誰もが休まざるを得ない可能性があるのですから、皆で助け合えるよう、意識を持つべきです。余剰人員を抱えてしまうかと、しり込みもあると思いますが、最低限の人員の確保に苦しむより、ずっと建設的なのではないでしょうか。

女性が積極的に仕事に参加できる環境を整えることは、人手不足の大いなる解消に繋がるはずです。それには妊娠し出産できるよう、堂々と休暇の取得ができるというモラルを職場で植えつけることからはじまるのかもしれません。

※ 当サイトで使用しているホールや機械の画像はすべて許可を取り撮影し、掲載しております。

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